診療日誌

2015.08.31更新

診断基準や診断分類はできるだけ一定であったほうがいい。しかし、研究が進み考え方が変わってきたり、地域や文化の差などでとらえかたが異なってくる場合がある。世界基準とされるものはICDとDSMである。ICDはWHOがまとめたもので、DSMはアメリカ精神医学会でつくられたものである。ICDには実は診断ガイドラインというものと研究用診断基準の二つがあり、後者は前者より、より厳密につくられている。一般に使われているのは診断ガイドラインの方である。
診断基準は通常最大公約数として抽出された症状や経過や特徴を一つのまとまりとし、一つの疾患単位としている。従って典型例でない場合や軽症例などではその基準には含まれない。しかし疾患単位とされる基準にあてはまるケースが少数で、非典型例のほうがむしろ多く、基準自体が問題になっているものもある。
診断基準に合致しない場合は、例えばAという疾患につぃては<他のA>という形であらわされる{ただし、その疾患のカテゴリーに含まれるということが前提であるが}。また十分な情報がえられず、診断基準に照らし合わせること自体むずかしい場合は、便宜上<A、特定不能のもの>として示される。こうして診断基準の足りないところが補えるようになっている。
 

投稿者: 湘南こころのクリニック

2015.08.21更新

躁病が<躁病エピソード>と<軽躁病エピソード>に分けられているように、うつ病も<うつ病エピソード>と<軽うつ病エピソード>の2分類で考えてみると病気の本質がみえてくる。躁とうつは本来<対>になるものであるからだ。ちなみに<躁病エピソード>と<軽躁病エピソード>のちがいは症状の多寡や症状の重症度で示されるが、本質的なところは別にある。<躁病エピソード>は言動が逸脱し、理性をもってしても全く抑えられなくなる。従って周りの人と始終トラブルをおこすようになり、結局入院を余儀なくされる。それに対し<軽躁病エピソード>は通常入院を要することはない。ときに抑制が効かず周囲とトラブルになることはあっても、ある程度のコントロールが自分でも可能であり、トラブルは一時的な事態でおさまるからである。
うつ病についても同じことがいえる。<うつ病エピソード>では仕事や家事といった社会的機能が自分の意志とは無関係に遂行できなくなる{そのために入院する必要はないが}。それに対し<軽うつ病エピソード>では社会的な機能の障害は多少あっても、仕事や家事を一応こなすことができる。自分でもコントロールがある程度可能なレベルといえるである。生活指導{無理をしないことなど}や心理療法{マイナス思考を直すことなど}で改善が期待できるともいえる。
なお<軽躁病エピソード>や<軽うつ病エピソード>は躁うつ病やうつ病の範疇に含まれ、躁うつ病やうつ病の裾野の広がりの一因ともなっている。
躁うつ病やうつ病よりも軽いレベルのものがある。社会的機能は全く普通なのだが、軽い躁症状や軽いうつ症状が長期間{2年以上}に及ぶと、本人の苦痛や苦悩の原因となり、この場合持続性気分障害{気分循環症や気分変調症}と呼ばれている。

投稿者: 湘南こころのクリニック

2015.08.13更新

<うつ状態>を状態像として考えた場合、その特性によって<うつ>の分類が可能になる。うつ状態がある一定の基準以上であると本来の<うつ病>と言われる。この基準が診断基準といわれるものであるが、その主な点は時間的継続性と症状のひろがりと除外診断である。時間的継続性とは毎日、2週間以上、1日の大部分{少なくても半分以上}ということである。従ってお休みの日は全然大丈夫という人はうつ病からはずれる。症状の広がりとは<うつ>の症状が4ないし5個以上あるということである。このうち<抑うつ気分>か<意欲の低下>は必ずないといけない。単に憂鬱というだけではうつ病にならない。除外診断とは身体の病気からくる<うつ状態>や薬物からくる<うつ状態>を除くということである。
ストレスが直接的な原因と考えられ、うつ病ほどの程度まではなく、日常生活に支障が生じているものを適応障害とよんでいる。この適応障害にはうつ状態以外にも、不安状態、行動異常などをともなう場合がある。適応障害という病気は原則、期間限定となっている。うつ状態の場合は1年半、それ以外のものは原則3か月を越すと、その時点での病状にあった病名をつけるようになっている。
そのほかうつ病でもなく適応障害でもない<うつ状態>を示す病気はいくつか知られている。

投稿者: 湘南こころのクリニック

2015.08.02更新

<うつ状態>という表現は本来<状態像>をあらわす言葉として使われていた。状態像を示すものとしては他にも<幻覚妄想状態><不安状態><興奮状態><昏迷状態>などがあげられる。精神科臨床で大切なことは患者さんが示している症状をどのように理解し、把握するかということであり<状態像>をつかむことは基本中の基本となっている。<うつ状態>を示す病気は実はたくさんある。代表はうつ病であるが、それ以外にも<うつ状態>を示すものは多い。
ここで話しは変わるが、衆・参議員選挙の時期になると{一票の格差}ということが言われ<違憲>とか<違憲状態>という裁判所の判決が話題になる。テレビのアナウンサーは{違憲状態は違憲ではないが、違憲に近い状態}と説明していた。これを<うつ病>にあてはめてみると<うつ状態はうつ病ではないが、それに近い状態>となる。なるほど、実際に私も患者さんを前にして{うつ病まではいっていませんが、その一歩手前のうつ状態ですね}などと説明をしていることがあった。
これに関連して話しをもう少し進めてみることにする。医薬品の添付文書の適応症のことである。抗うつ薬のほとんどに記されている適応症は<うつ病、うつ状態>である。製薬メーカーはできるだけ多くの人に薬を使ってもらいたい。だから<うつ病>だけでは困るのである。この場合<うつ状態>とは{うつ病以外のうつ状態を示す病気}ということに他ならない。この分類法は非常にシンプルでわかりやすい。
ちなみに<うつ状態>をDSM-5でとらえてみると、<抑うつ障害群>に近いが、上記の考え方のままでいくとさらに広い概念となり、DSMでも一個ののまとまりとしては収まらないのである。

投稿者: 湘南こころのクリニック

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