診療日誌

2015.01.26更新

 前前回からのつづき~
そして精神障害者の多くが薬さえ飲めれば自宅での治療や社会復帰が可能になること、しかも少量の抗精神病薬でもかなりの効果があがることを実感した。また治療が継続できるのは家族と本人とのつながりが強固であることや家族側の理解がしっかりしていることが成功の鍵となるということがわかってきた。
3年前から平塚保健福祉事務所でアウトリーチがおこなわれるようになり、私も誘われ参加することになった。往診での経験はあったが、今回のアウトリーチでは相談役に徹することになった。アウトリーチは福祉的な側面が強く、保健所での制約{薬を使ったり、医療行為が原則できない}があったためでもある。多分このような制約がなければ医療と福祉の協力がもう少しスムースにできたと残念である。アウトリーチは時間や労力を費やし、骨の折れる活動である。今後どのように広がっていくかは国の医療福祉政策が主導していくものと思われる。地域に密着した活動としてさらに光があたっていくことに期待したい。

投稿者: 湘南こころのクリニック

2015.01.16更新

フランスのパリで週刊紙シャルリー・エブド襲撃事件がおこり17名の犠牲者を出した。言論の自由に屈するなというスローガンのもと数十万人のデモ行進がおこなわれた。フランス人にとっては言論の自由は曲げられない正義という。しかしそれは正義なのであろうか。世界にはいろいろな考え方をする社会が存在する。そのような考え方をする社会をいっさいみとめないということなのだろうか。今回の問題であればイスラム世界に対する認識に起因するようである。自分たちとちがう考え方をするからあやまりとか認めないとかでなく、どのような関係が望ましいのかをもう少し思慮深く考えていく必要があると思う。イスラム世界の人たちにとっては預言者やアラーは絶対的な存在であるという現実を踏まえて、ちがった対応の仕方を考えていった方がいいのではないだろうか。今のやりかたを続けていくとますます対立は深まっていくし、民族紛争や宗教戦争のような色彩を帯びていってしまうだろう。冷静になって、世界が混乱する方向でなく、融和する道をめざしていって欲しい。そしてテロとの対決というスローガンに終止符をつけてもらいたい。
ところで日本人は無宗教の人が多い。そういう私もそうである。だからクリスマスをして、年末は除夜の鐘を聞き、年があけたら神社におまいりをする。だれも文句は言わないし、けんかをすることもない。そもそも誰も変だとは思わない。いい言い方をすると{おおらか}だが、悪い言い方をすると{にぶい}のかもしれない。しかし世界がそのようになれるとそれはそれで喜ばしいと思うが。

投稿者: 湘南こころのクリニック

2015.01.09更新

今回は平塚保健福祉事務所でおこなわれたアウトリーチ事業に参加して、その印象を私なりにまとめたものを紹介したい。この文章は平塚保健福祉事務所で近くまとめられる報告書のなかで載せられるものと同じである。すこし長くなるので2部に分けることにした。

私は平塚保健福祉事務所の嘱託医として25年以上にわたり精神保健相談にたずさわってきた。月に1度の非常勤医師であるが、多くの精神障害をもつ家族の方にお会いした。その中で私を悩ましつづけたのは、困っている本人や家族に対し、1回の相談のみでは問題の解決には実際つながらないのではないかという思いだった。そうした経験をふまえ、私は13年前に訪問診療{往診}をメインにした診療所をつくり、約3年間の活動をおこなった。当時は精神科病院に常勤医師としてつとめていたので、土・日を主な診療日とし往診をおこないつづけた。この経験は私には非常に価値のある経験となった。じっくりと診療することによって薬の使い方をいちから見直すきっかけになったし、本人にいかに薬をのんでもらうかという思いからシンプル処方にこだわるようになった。        {つづく}

投稿者: 湘南こころのクリニック

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