診療日誌

2014.08.28更新

8月25日付けの朝日新聞で<公務員の適正評価 精神科医らが批判>の記事がでていた。特定秘密法案の施行に際し、特定秘密を扱う人の適正評価に{精神疾患の治療歴}が盛り込まれたことについて、多くの批判が集まったという内容である。この種のこころの病をもつ人への偏見・差別は今でもあちらこちらに認められている。例えば会社の就職面接に際し「こころの病気で病院に通っていませんか? 安定剤的な薬はのんでいませんか?」という質問をする会社が増えているという。ある患者が「<そのようなことはありません>とうそをついて入社したが、しばらくしてばれてしまい、上司等から叱責された挙げ句、契約の更新を断られた」という。会社としては健康な人を雇いたいという思いはわからないわけではないが、このような傾向が強くなればなるほど、ますますこころの病をもつ人の就職は困難になってしまうだろう。障害者雇用の道がないわけでもないが、精神の病の場合圧倒的に数が少ないというのが現実である。

投稿者: 湘南こころのクリニック

2014.08.21更新

私は月に1度保健所に行っている。そこで行われている精神保健相談の担当者の一人でもある。相談に来られるのは大概は家族だが、ごくまれに本人が来られることがある。また必要に応じ、訪問をおこなうこともある。この間、ひきこもりを数年つづけていた方のお宅をお邪魔した。お話しを伺うとうつ病と推測された。今はかなりよくなっているようだが、日によって悪い時もあるようである。帰りぎわ母親から<先生、うつ病って治るんですか?>と訊かれた。
うつ病の経過については20~30年前までは{うつ病は治る病気}といわれ、私もそれを信じていた。しかし現実は<慢性化する例>や<難治化する例>がかなりあり、うつ病の10~15%はなかなか治らないと言われて久しい。最近ある本をみて目からうろこがおちた。アレンフランセス著<精神疾患診断のエッセンス>にこう書かれていた。<どのうつ病エピソードであっても3分の1は完全によくなる。3分の1はよくなるが、症状がある程度のこる。3分の1は全く反応せず、最初の治療と別の治療が必要である><エピソードの大半は何カ月も続くし、あるものは何年も続く。一生続くこともある>という。うつ病は治る病気というのは患者さんを安心させる方便として使われてきたふしがある。<その人その人によっていろいろの経過を示し、いちがいに何とも言えない>というのが正しい答えかもしれない。

投稿者: 湘南こころのクリニック

2014.08.11更新

精神疾患にはストレス要因、環境要因の関与が大きい病気もあるが、逆に脳の病気といってもいいような精神の病いは多い。認知症、てんかん、発達障害、知的障害はその最たるものだが、それ以外にも統合失調症、躁うつ病もまた生物学的関与の大きい病気である。ちなみにうつ病と言われているものの多くはストレスが関与している{うつ病の一部は躁うつ病と類似しているが、おおくはストレス等が絡んで発症してくる多因子的なものである。ここのあたりを区別していかないと研究の母集団を選ぶときに間違った結果をもたらしてしまうだろう}。統合失調症と躁うつ病は昔は二大精神病と言われたが、治療法がある程度確立してからはそれほど恐ろしい病気ではなくなってきている。精神の二大疾患以外にも生物学的要因が強いと考えられる病気は実は多いと推測される。例えば強迫性障害やパニック障害や摂食障害といった病気は脳の機能的な障害が症状発現に関与している可能性が高い。なお大部分の精神疾患においてその原因は未だわかっておらず、従って薬物治療といっても根本治療といえるものではなく、あくまでも対症療法といってよい。そのため症状をコントロールするために薬を長期にわたってのみつづけるわけである。

投稿者: 湘南こころのクリニック

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